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今日もまた終わる。

都内だけでも30万人はいる平凡なサラリーマン。ライターもやってます。

ケーキ箱の中には

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その日は、誰の誕生日でもないのに、父がケーキを買ってきた。

「後でみんなで食べるんだから、開けるなよ!」

寒い玄関の靴箱の上にポンと置かれたケーキ箱。
当時小学生だった私と弟は迷いなく包装の紐を解いた。

ショートケーキ、チョコレートケーキ、モンブランなど、様々なケーキが6個。
この場合我が家では、私と弟が2個ずつ、父と母が1個ずつと決まっている。

「1個だけ半分こして食べちゃおっか?」
「うん!」


2人で1個食べ、証拠が残らないよう元通りにケーキ箱を包装した。


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数時間後、みんなで食べる頃になりリビングに行くと、父の姿がなかった。
母は風呂に入っていたので、こっそり玄関にケーキ箱を見に行った。

ない。

ケーキ箱がない。
食べたことがバレて、怒った父が何処かに持って行ってしまったのかもしれない。

ガチャ。

玄関のドアが開いた。
父が帰ってきたようだ。

「箱開けたら1個足りなくてさぁ、店に文句言ってきてやったよ

これはまずい。
バレたら殴られる。

「へー、それはひどいね!」

弟とユニゾンで言った。
弟と血の繋がりを感じた数少ない機会だった。





そんな出来事も忘れた約10年後、私はそのケーキ屋で働くことになった。
特にやりたいこともなく、なんとなくパティシエに憧れて、軽い気持ちで面接を受けたら受かってしまったのだ。

初出勤の研修で、注文の受け方、ショーケースからケーキの取り方、箱の包装の仕方などを習った。

「ケーキを箱に入れたら、包装する前にお客様に中をお見せして確認していただきます」

ベテランのおばさんの説明に、他の新人が訊く。

「どうしてですか?」
「それはですね、以前は確認していなかったのですが、
昔、『箱を開けたら1個足りなかった』というクレームがあってから徹底するようになって…

…まさか、ね…。



1-24yama.hatenablog.com