今日もまた終わる。

都内だけでも30万人はいる平凡なサラリーマン。ライターもやってます。

アイススケートデートの約束

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まだまだケータイの普及が進んでおらず、
ウチには父が会社から持たされていたものしかなかった、私が小学6年生の頃だ。
掛かってきた家の電話に出た母が、ニヤニヤして私に受話器を渡す

「Mちゃんからだよ」

同じクラスの女子からだ。
頭が良くてスポーツもできて明るくて、天真爛漫という言葉がぴったりなコだ。

「急に電話してごめんね」
「うん、大丈夫」

コードレスホンを持ってリビングから誰もいない和室に逃げた。

「今度の日曜日、スケートしに行かない?」

それって、デート?


 


当時は当然童貞、それどころか手を繋いだこともなければ、
こうして家に女子から電話がきたのも初めてだったのに、いきなり?

「え! あぁ、うん、いいよ…」
「ホント? よかったぁ、じゃあ10時にスケート場の入口ね!」

そのコのことを好きな訳ではなかったが、カワイイと思ったことは何度かあった。
特に、スカートでもなりふり構わず走り回っていたのでよくパンツが見えていた印象が強かった。


デートの日までまだ数日あるのに、学校でこのことを誰にも言えなかった。
言ったところで茶化されるだけだし、光の速さで噂が回ってしまう。
MちゃんはMちゃんで、教室でいつものように話し掛けてきたが、
デートについての会話は一切してこなかった。


いよいよ前日の夜、布団の中で考える。
人生初のデートか、緊張するな。
どんな会話をするんだろう? いつもみたいに友達の話や授業の話でいいのかな?
顔を思い浮かべると、だんだん可愛く思えてきた。
いや、もう世界一カワイイ


 


ニヤニヤした母に選んでもらった服を着て家を出た。
気持ちが焦り、待ち合わせより15分も早く着いてしまった。
Mちゃんが来るであろう方向をチラチラ見ながら入口で待つ。

そして10分後。

「あれ? 何やってんの?」

同じクラスの男子が横に立っていた。
仲が良くも悪くもない奴。
私もだいぶ暗かったが、そんな私から見てもかなり暗い奴。

「びっくりした、そっちこそ何やってんの?」
「何って、これからスケートだよ」

これはまずい。
もうすぐMちゃんが来て、デートがバレてしまう。
しかし、待ち合わせ場所を変更しようにも、連絡手段がない。
あぁ、これで明日から学校でからかわれるんだ…。

「お待たせー」

そのとき、Mちゃんを含む女子3人がやってきた。
これはどうゆうこと?
私たち2人はきょとんとしていた。

「あと1人だね、まぁいっか、先に入ってよう!」

話を聞くと、そいつとまだ来ていない1人を含めた3対3だった。
デートでもなんでもなく、ただみんなでスケート場に遊びに来ただけだった。


1年後、ほぼ好きになってしまったMちゃんは私立の中学校に通うことになり、会えなくなった。
現在のMちゃんに会ってみたいものだ。


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