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今日もまた終わる。

都内だけでも30万人はいる平凡なサラリーマン。ライターもやってます。

春一番の約束

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お題「よく口ずさんでいる曲」


暦の上ではとっくに春。
なるほど、ここのところ暖かくなってきて、昼間はコートなしでも外を歩ける。
街のスピーカーから桜をテーマにした曲が流れてきたりして、暦の上だけでなく、体感できる時期になってきた。


小学生の頃、『ボキャブラ天国』が大好きだった。
特に初期の、素人がハガキを投稿していた頃が好きだった。
家族揃って食卓を囲んで、20インチほどのテレビに目を奪われていた。

ある日の放送終了後、

「よし、浮かんだぞ!」

父の自信に満ちた表情。
投稿するネタを思いついたらしい。


「もうすぐハ~ゲですねぇ~」

父が満を持して発表したのは、キャンディーズの『春一番』の替え歌。
今思うと、とんでもないスベりっぷりである

しかしながら、当時はこれが面白くてたまらなかった。
幼く、箸が転んでもおかしい年頃のことだから許してほしい。

母がハガキを書き、家族で意気揚々と投稿したが、当然採用されることはなかった。





それでもこの替え歌を気に入ってしまった私と弟は、しばしば家で口ずさんでいた。

「もうすぐハ~ゲですねぇ~」

「ハゲ」というワードとキャッチーなメロディ。
幼い私たちの脳に刺青のように跡をつけた。

「お前ら、それおじさんの前では歌うなよ」

おじさんというのは、伯母の旦那のこと。
これがまぁハゲ散らかしているのだ。
幼いとはいえ察することはできたので、父の注意にただ頷いた。
「もうすぐ」というより、「すでに」だけどね。


数日後、伯母とおじさんが、従妹を連れてウチに遊びに来た。
オチがバレている気がするが続ける。

当時3歳の従妹がとても可愛くて、弟と3人でボールを投げたりゲームをしたりして遊んでいると、
テンションが上がった弟がやらかしてしまう。

「もうすぐハ~ゲですねぇ~」

時が止まった気がした。
自分のミスに気づいた弟は混乱した。

「あ、あの…ごめんなさい!」

さらに重ねてやりやがった。
謝ってしまったら、もうそれはそれのことになってしまう。

「えっ! ごめんなさいって何?」

空気を読んで、おどけてみせるおじさん。
父と母は腹を抱えて笑っていやがった。

おじさんと伯母は離婚して、おじさんには会えなくなったけど、
楽しい思い出をありがとう。
春になる度、あなたの頭皮を思い出すよ


エチュード春一番(第1曲)

 

担任の先生の言葉

今週のお題「卒業」


卒業シーズンになるといつも思い出す。

「ごまかしてはいようが、あのときお前はなんとかしたから俺は怒らなかった」

中学校の卒業式当日、担任の先生に言われた言葉だ。
今でもこの言葉を大切にしている。

先生が私にそう言ったきっかけの出来事は、その半年ほど前に起こった。


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「西山! 田中! 提出してないのお前ら2人だけだぞ!」

ある日の帰りの会で先生が言った。
先生が言っているのは、前の週に配られた保護者会の出欠票のことだ。
すでに提出期限日から3日過ぎている。

「ウチは欠席です」

私の両親は共働きなので、こういった類のものに出たことは一度もない。

「口頭じゃなくて、ちゃんと出欠票を提出しろ! みんな提出してるのに、お前だけ特別扱いはしないぞ」

出欠票どころか、テストや通知票すら親に見せたことがなかった。
不要なプリントは教室のゴミ箱にそのまま捨てていたし、親も何も言わなかった。
3年生になって志望校を決める際に初めて私の成績を母に伝えたところ、想像よりも上だったようで、

「あんた、なんで勉強できるの?」

と言われたときはさすがに呆れた。
ダメだと思っていたのなら、よくもまぁ放っておいたものだ。
というか、どんだけバカだと思われたんだよ。


その日は田中と下校した。

「あー、めんどくさ、みんなの前で言われたから恥ずかしかったよ」
「そうだなー、ところで田中」
「ん?」
「出欠票コピーさせて?」

どうせ探しても見つからないと踏んでお願いすると、田中が笑いながら快く貸してくれたので、
通学路にあるローソンに入ってコピーした。
田中は外で待っていた。

原本は藁半紙、コピーの方はキレイな白い紙だからコピーしたのがバレバレだけど、
まぁ、なんとかなるなる!
これで明日は怒られずに済みそうだ。





翌朝、教室に到着するなり田中が駆け寄ってきた。

「あ、昨日はありが……」
「おい、俺の出欠票は!?」

あ。
ローソンのコピー機に入れたままだ。

「マジかよ! お前、貸した方が失くされるってどんな……」
「おはよう!」

ちょうどそのタイミングで、朝の会のため先生が入ってきた。

「西山、田中、ちゃんと持ってきたか?」

いきなりだ。
とりあえず私は席を立ち教卓まで渡しに歩いた。

「田中は?」
「すみません、忘れました!」

田中は、私のせいであることを一切言わなかった。


決定盤「卒業ソング」

ベスト(1枚組)



そして、卒業式の日がきた。

「お前、あれコピーだったろ?」

あのときの話だ。

「あ……やっぱり分かりますよね」
「分かるに決まってるだろう。まぁでも、ごまかしてはいようが、あのときお前はなんとかしたから俺は怒らなかった。社会に出たら、そうゆうことも必要だからな

1枚の出欠票からこんな話になるなんて。
中学時代の大きな思い出の1つになった。


田中からしたら、忘れたい思い出かもしれないけど。