帰ってきた愛犬?
お題「我が家のペット」
実家で犬を飼っていた。
ゴールデンレトリバーで、名前はチョコ。
6年前に亡くなってしまったが、私が中学2年生の時にウチに来て、
10年くらい私たち家族を癒してくれた。
私が高校生の頃だった。
ある大雨の日、雷に驚いたチョコが暴れて首輪が外れ、
庭を飛び出し何処かへ走って行ってしまった。
家にいたのは私、弟、おじいちゃん。
3人で手分けして探すことにした。
傘を差し、名前を呼び続けながらチョコを探した。
犬の散歩をしている人には、ゴールデンレトリバーを見なかったかと訊いたりした。
1時間経っても見つからず家に戻った。
程なくして弟も戻ってきたが、やはり見つからなかったようだ。
頼みの綱はおじいちゃん。
正直全く期待はしていないが、そこに掛けるしかない。
ところが、30分経ってもチョコどころかおじいちゃんも帰ってこない。
おいおい、ミイラ取りがミイラに、とはちょっと違うけど、
二次災害は勘弁してくれ。
弟と一緒に探しに出た。
「兄、ちょっと待って!」
弟が制止する。
「おじいちゃんの車がないよ」
「え?」
確かにない。
あのジジイ、まさか横着して車で探しに行ったのか?
そこにちょうど帰ってきた。
「ただいまー」
「何処行ってたの? …って、チョコ!」
デカい身体を後部座席に広げてチョコがのん気に寝ていた。
ドアを開けると何事もなかったかのように尻尾を振って私の足に擦り寄る。
雨が止むまで家の中にいさせることにして、チョコの身体を拭いた。
私と弟は安心からか力が抜け、ソファに倒れこむように座った。
「ところで何処にいたの?」
一段落しておじいちゃんに訊いた。
「警察署だよ、その辺探してもいなかったから、
警察に行ってどうなるものでもないと思ったけど一応行ってみた」
すると運良く警察官が一時的に保護してくれていたらしい。
私たち家族とチョコの繋がりに運命すら感じた。
そして翌日、
「一、ちょっといいか?」
私の部屋をノックして、おじいちゃんが入ってきた。
「何?」
「チョコのことだけど…」
神妙な面持ち。
「昨日な、警察署にゴールデンレトリバーが2匹いたんだよ。
ちゃんと見比べたし、名前を呼んだら尻尾を振ったんだけど、
今ウチにいるのがチョコだよな?」
まさかの2択?
いや、でも昨夜は父も母もいつも通りにチョコと接していたし、違和感はなかった。
「うん、チョコだよ」
「そうか、それなら良かった」
そう言ってみたものの気になってしまい、私は外に出てチョコを見にいった。
頭や首筋を撫でながら確認する。
おい、もうちょっと毛の色が濃くなかったか?
いや、そんなはずは…。
見れば見るほど分からなくなっていく。
実家に帰ると、庭にあるチョコの墓石にいつも思う。
あれから長年に渡って私たちを癒してくれたチョコ。
お前がチョコでもチョコじゃなくても、お前はチョコだよ。